依存とは「耐え難い内面から逃れようとする手段」

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依存とは、逆境や処理されない感情によって生じた
耐え難い苦しみから、一時的に避難するための
「避難所(refuge)」である。

依存には必ず何らかの利益(benefit)や役割があります。

例えば、

  • アルコール
  • 薬物
  • ギャンブル
  • ポルノ
  • 過食
  • 買い物

など、対象は違っても共通しているのは、

本人が他では得られない何かを、
その依存から受け取っているということです。

依存は薬物だけではない

さらに著者は、依存の対象は薬物に限られないと強調します。

同じ構造は、

  • 性行動
  • ポルノ
  • インターネット
  • 買い物
  • ギャンブル
  • 過食・拒食・過食嘔吐
  • 仕事
  • 極限スポーツ
  • 強迫的な恋愛・人間関係
  • 瞑想やスピリチュアル実践

にも見られることがあります。

著者は、当事者たちの証言を受けて、
「依存が人にもたらすもの」を整理します。

  • 安心感
  • 温もり
  • 平和
  • 自分らしさ
  • 人とのつながり
  • 「普通の人間になれた」という感覚

たとえば、依存経験者の一人は、

「薬を使うと、人間とは本来こう感じるものなのだと思えた」

と語っています。

つまり依存が与えているのは、異常な快楽ではなく、
本来なら健全な愛着や人間関係の中で育まれるはずの感覚なのです。

問題は、

「薬をやめればいい」

ことではなく、

その人が薬によってしか得られなかったものを、
どうすれば別の形で得られるのか

依存の本質

著者は依存の本質を次のようにまとめます。

依存とは「自己という牢獄」から逃れようとする試みである。

ここでいう「自己」とは、本来の自己ではなく、

  • 孤独
  • 自分には価値がないという感覚
  • 空虚さ
  • 希望の喪失
  • 意味のなさ
  • 内なる苦しみ

によって閉じ込められた状態を指しています。

そのため人は、

苦痛そのものからではなく、
「苦痛を抱えた自分自身」から逃げようとするのです。

著者はさらに問いかけます。

なぜ人は、自分自身から逃げなければならないほど苦しい状態になったのか。

その答えは、

  • 子ども時代の傷つき
  • 愛着の欠如
  • トラウマ
  • 慢性的なストレス

などにあると示唆します。

そして、

依存の中心テーマは「痛み(Pain)」である。

と結論づけています。

  • 依存が与えているのは快楽ではなく、**安心・つながり・「普通でいられる感覚」**である。
  • 「もっと良い選択をすればよい」という考えでは依存は理解できない。
  • 依存とは、耐え難い内面の苦しみや孤立感から逃れるための適応である。
  • 依存症の本質を理解するには、「何を使っているか」ではなく、**「どんな痛みから逃れようとしているのか」**を見る必要がある。

「依存の反対は意志の強さではなく、安全・つながり・安心である」

「依存そのものを問うのではなく、その痛みを問うこと」

依存は問題の原因ではなく、より深い苦しみへの反応なのです。

医師ダン・サミュールズの証言

続依存症治療に長年携わってきた医師 ダン・サミュールズ

彼は、約40年にわたり
数千人のオピオイド依存症患者を診療してきた経験から、

「依存症の根底にはトラウマがある。」

と断言します。

若い頃は「依存は本人の責任だ」という考えも耳にしてきましたが、実際の臨床では、

「トラウマとは無関係だった依存症患者を、私はまだ一人も見たことがない。」

というのが彼の実感です。


依存を理解するには、

  • 何がその人を苦しめてきたのか
  • 何を鎮めようとしているのか
  • なぜその苦痛が生まれたのか

を知る必要があります。

そのため著者は、依存から回復した人々の人生を丁寧に見ていくことが重要だと述べます。

その背景には共通して

  • 愛着の欠如
  • 虐待
  • ネグレクト
  • 家庭の混乱
  • 深い孤独
    が存在している。

依存は、こうした幼少期からの耐え難い苦痛を和らげるための適応反応として理解できる。

同じ傾向が確認されていると説明します。

トラウマと依存の研究

バンクーバーでの長年の臨床経験でも、多くの依存症患者が幼少期に

  • 性的虐待
  • 身体的虐待
  • ネグレクト(養育の欠如)
  • 家庭内暴力

などを経験していたと述べています。

さらに調査では、

  • 身体的または性的虐待を受けた若者は、薬物使用率が2~4倍高い
  • 性的虐待歴のある若者は、アルコールを飲み始める可能性も約3倍高い

ことが示されています。

つまり、幼少期のトラウマは、その後の依存症の最も強力な危険因子の一つであることが、臨床経験だけでなく研究でも裏づけられているのです。

依存症の人を「特別な問題を抱えた人」と切り離すのではなく、

私たちは皆、同じ人間であり、
誰もが何らかの方法で苦痛に対処しながら生きている。

と述べます。

参考図書:The Myth of Normal: Trauma, Illness, and Healing in a Toxic Culture (English Edition)  Gabor Maté MD  (著)