ADHDや反抗挑戦性障害(ODD)などの診断を、
「子どもの欠陥」としてではなく、人間関係や環境への適応として捉え直すべきだ
という著者の主張です。
ADHD診断に影響する「相対年齢効果」
前半では、ADHD診断に影響する
「相対年齢効果」が紹介されています。
著者は、University of British Columbiaの研究を引用し、同じ学年でも12月生まれの子どもは1月生まれの子どもよりADHDと診断される可能性が約39%高かったと述べます。
その理由は、12月生まれの子どものほうが学年内で約11か月幼く、脳の成熟度の違いが「障害」と見なされてしまう可能性があるためです。つまり、発達の個人差を病気として扱ってしまっているケースがあるという問題提起です。
ODD(反抗挑戦性障害)への批判
ODDは、
- 怒りっぽい
- 反抗的
- 大人に逆らう
- 口論が多い
といった特徴で診断されます。
しかし著者は、
「反抗(oppositional)」という言葉自体が、
人間関係を前提にした概念である
と指摘します。
たとえば、
- 一人でいる人は「反抗的」にはなれません。
- 「誰か」との関係があって初めて「反抗」は成立します。
つまり、この診断は子どもの内側だけではなく、
その子を取り巻く人間関係や環境も見なければ理解できないということです。
「問題行動」は適応かもしれない
著者はさらに、
子どもの行動は人間関係の文脈の中で理解されるべきだと述べます。
養育者との安全なつながりが十分に育っていない子どもは、
- 大人を信頼できない
- 支配されることに敏感になる
- 権威に強く抵抗する
ことがあります。
その場合、「反抗」は病気ではなく、
安全ではない環境に適応した、生き延びるための反応と考えられるのです。
ブルース・ペリーの考え
最トラウマ研究で知られる精神科医のBruce D. Perryの言葉
ペリーは、長年の臨床経験を通して、
診断名は生理学的な実体ではなく、
あくまで「記述(descriptions)」にすぎない
と考えるようになったと語ります。
つまり、
ADHDやODDというラベルは、
症状を説明しているのではなく、
見えている行動を分類しているだけだということです。
「子どもの行動を『障害』として見る前に、その子がどんな環境で、何に適応しようとしているのかを問うべきである。」
- ADHD診断には、**学年内の年齢差(発達の違い)**が影響している可能性がある。
- ODDのような「反抗」は、人間関係から切り離して理解することはできない。
- 子どもの問題行動は、不安全な環境への適応反応である場合がある。
- ブルース・ペリーは、診断は実体ではなく、現象を記述するラベルにすぎないと指摘している。
ということです。
「What’s wrong with you?(何が悪いのか)ではなく、What happened to you?(何が起きたのか)を問う」という視点を、子どもの発達や行動の理解にも適用した内容になっています。
参考図書:The Myth of Normal: Trauma, Illness, and Healing in a Toxic Culture (English Edition) Gabor Maté MD (著)
