「マインドフルネスは役立つが、同時に危険にもなりうる」
という本書の核心に踏み込みます。
ニックの事例
ある日ニックは公園で、
父親が幼い息子を怒鳴っている場面を目撃します。
その瞬間、
- 胃が締め付けられる
- 父親の記憶がよみがえる
- 怒りが湧く
- 殴りかかりたくなる衝動
が起きました。
今回は逃げなかった
しかしニックは、
ベンチに座り、
目を閉じ、
呼吸を感じます。
そして、
「この感覚から逃げない」
と決めます。
すると、
- 胸の熱さ
- 肩の緊張
- 胃の痛み
はすぐには消えないものの、
少しずつ変化し始めます。
やがて目を開けると、
我が子が楽しそうに遊んでいる姿が見えます。
これは「曝露」の一種
著者は、
ニックが行ったことは
マインドフルな曝露(mindful exposure)
苦痛な体験から逃げるのではなく、
安全な範囲で・少しずつ関わる
ただし条件がある
ここで重要なのは、
ニックにはすでに
- マインドフルネスの練習
- 自己調整力
- 安全な治療関係
があったことです。
だから耐えられた。
ここまで説明してきた
- 注意の調整
- 身体への気づき
- 感情調整
- デュアル・アウェアネス
- 曝露
は、確かにトラウマ統合を助ける。
しかし、
マインドフルネスには危険性もある
と続けます。
ニックの別のケース
ある夜、
家族が外出した後、
ニックは一人で瞑想します。
最初は順調でした。
- 呼吸を見る
- 気が散ったら戻る
という普通の瞑想です。
ところが10分ほどすると、
突然
- 父親のフラッシュバック
- 危険感
- 強い恐怖
が押し寄せます。
ニックは何度も目を開け、
「今は安全だ」と確認します。
しかし、
目を閉じると再び記憶が押し寄せます。
「今は一人での瞑想を控えた方がいい」
ニックは確かに進歩していました。
しかし、
- フラッシュバック
- 強い怒り
- 圧倒される感覚
がまだ強かった。そのため著者は、
「今は一人での瞑想を控えた方がいい」
とニックに提案します。
同じマインドフルネスでも、
「支えの中で行う」のと「一人で行う」のでは
結果が大きく変わることがある。
公園のニックはうまくいったのに、
家で一人のニックは圧倒された違いは何か。
おそらく、
- 公園
- 子どもの姿
- 現実の環境
- 外界との接触
が「支え」として機能していたからです。
一方、
一人で目を閉じると、
内側だけの世界になり、
フラッシュバックに飲み込まれやすくなった。
ニックは瞑想を続けた
ニックは一人で瞑想している最中に
- 父親の記憶
- 強い恐怖
- フラッシュバック
に飲み込まれそうになっていました。
しかし彼は、
「もっとマインドフルネスをやれば良くなるはずだ」
と考え、
実践を続けようとします。
実際には逆効果になった
ところが著者は、
ニックが瞑想していた時間の大半は、
実は
トラウマ反応を強める時間
になっていたと指摘します。
具体的には、
- 呼吸が浅くなる
- 発汗する
- 誰かを殴りたくなる感覚
- イライラ
- 恥
などが増していきました。
なぜこうなるのか
トラウマサバイバーが陥りやすい罠として、
過度な内向き注意
を挙げています。
マインドフルネスでは、
今起きている体験に注意を向けます。
しかしトラウマを抱える人の場合、
その注意が
- フラッシュバック
- 危険感覚
- 戦う/逃げる反応
に吸い寄せられてしまうことがあります。
「海藻に絡まるダイバー」の比喩
ある友人がダイビング講習を受けた時の話です。
最も危険な状況は、
海底の海藻(seaweed)に絡まることでした。
本能的反応
絡まると人はパニックになります。
そして、
必死にもがきます。
しかし、
もがけばもがくほど
海藻はさらに身体に巻き付きます。
必要なのは、
パニックではなく、
落ち着き、
状況を確認し、
適切な方法でほどくことです。
トラウマも同じ
著者は、
トラウマサバイバーが瞑想すると、
同じことが起きる場合があると言います。
マインドフルネスによって、
- 記憶
- イメージ
- 身体感覚
- 恐怖
に触れることになります。
すると、神経系が圧倒され、
もがくほど苦しくなることがあります。
トラウマは掘り起こされる
マインドフルネスが
- 家族の秘密
- 過去の暴力
- 忘れていた記憶
などを表面化させる場合があることも述べています。
つまり、
マインドフルネスは単なるリラクゼーションではなく、
深く眠っていたものを浮上させる力も持っているのです。
マインドフルネスの良い面
十分な準備があれば、
トラウマに気づき、
向き合う第一歩になる。
マインドフルネス危険な面
準備がない状態で深く入ると、
- パニック
- 圧倒
- フラッシュバック
に飲み込まれる可能性がある。
トラウマを抱えた人にとって、マインドフルネスは「海藻に絡まったダイバー」のような状態を引き起こすことがある。必要なのは、さらに頑張ることではなく、安全に落ち着ける手段である。
「感じることが大事なのではない」
「安全の中で感じられることが大事」
「もっと感じろ」ではなく、
「まず浮き上がれる状態を作れ」
と言い換えられるかもしれません。
参考図書:Trauma-Sensitive Mindfulness: Practices for Safe and Transformative Healing (English Edition) David A. Treleaven (著)
日本語訳もでています>>トラウマセンシティブ・マインドフルネスー安全で変容的な癒しのために デイビッド・A・トレリーヴェン (著)
