親の心身の状態が、なぜ重要なのか?
前回の
という話を、科学的な研究で補強しています。
子どもを変える前に親を支える必要がある理由
① 子どもは「親の神経系を借りて」生きている
特に乳幼児期の子どもは、
自分で自分の心や身体の状態を調整できない
そのため、
親や養育者の神経系を使って
安心したり落ち着いたりしています。つまり、
大人がストレス状態なら、
子どももストレス状態になりやすい
ということです。著者は、
「大人のストレスが増えるほど、子どものストレスも増える」
とシンプルに表現しています。
② ストレスを抱えた親の子供への接し方
研究では、
ストレス下の親は
- 忍耐力が下がる
- 厳しくなりやすい
- 罰を与えやすくなる
- 子どもへの共感が減る
ことが示されています。
また、以下のような力も低下しやすくなります。
- 落ち着いている
- 応答的である
- 子どもの状態を感じ取る
③ 支援があると変わる
興味深いのは、
サポートが増えると
母親のストレス反応や
厳しい養育態度が減少した
という結果が紹介されていることです。
つまり、親を責めるより、
親を支える方が効果的なのです。
④ 「そこにいるけど、いない」
心理学者Allan Schore
proximate separation(近接的分離)
という概念です。
身体的には近くにいるのに、
心理的には不在 という状態。
例えば、親が
- 不安で頭がいっぱい
- 夫婦問題で消耗している
- お金の心配をしている
- 仕事のストレスで余裕がない
とき、子どものそばにはいても、
実際には「十分につながれていない」ことがあります。
⑤ 子どもは「心の不在」を感じ取る
乳児は
母親が見えているだけでは十分ではない
と言います。重要なのは、
心理的につながっていること。
研究では、
「親が近くにいても、心理的には不在になってしまうことがある」
母親が目の前にいても、
情緒的に利用できない状態だと、
乳児は強い分離反応を示すことがある
子どもに必要なのは「存在」ではなく「つながり」
著者は心理学者Allan Schore
の「近接的分離(proximate separation)」
の概念を続けて説明しています。
親はそこにいるのに、心がそこにいない状態
たとえば、
- 不安
- 仕事の悩み
- お金の心配
- 人間関係のストレス
で親の意識が占められていると、
子どもは親のそばにいても
「十分な安心を受け取れません」
ストレスは「子供への応答性」を奪う
親のストレスが高いと、
子どものサインに対する
- 気づき
- 共感
- 応答
が減ってしまうことが強調されています。
親が愛情を失ったわけではありません。
むしろ、
愛情があっても
反応したり「つながる」余裕がなくなっている。
その結果、
子どもとの「情緒的な同期が起こりにくくなります。」
著者が繰り返し伝えているのは、
「親が悪い」のではないということです。
問題は、
親が慢性的ストレスにさらされる社会環境
つまり、
親の反応や養育行動だけを見るのではなく、
その背後にある
- 孤立
- 過重労働
- 経済的不安
- サポート不足
を見る必要があると言っています。
子どもは環境全体の影響を受ける
著者は、
子どもは親から直接何かを教えられなくても、
親の神経系の状態を通して環境を学ぶ
という見方をしています。
つまり、
親が
- 安心しているか
- 常に緊張しているか
- 支えられているか
は、そのまま子どもの神経系の発達にも影響します。
子どもにとって最も大切なのは、
親が完璧であることではなく、
情緒的につながれる状態にあることである。
ということです。
子どもは親のストレスの影響を受ける
親が慢性的なストレス状態に置かれていることが、
子どもの情緒発達に
大きな影響を与えると説明されています。
特に著者が問題にしているのは、
現代社会の親たちが抱える
- 経済的不安
- 学歴競争
- 将来への不安
- 社会的プレッシャー
です。
「良い未来のため」が現在を奪う
著者は、現代の親たちが
子どもに良い未来を与えたい
という思いから、
学業や成功への不安に駆り立てられていると述べます。
ある母親が、
宿題を嫌がる5歳の息子に対して、
「あなたは自分の学業的な将来のことを考えていない!」
と叱ったという話です。
著者はユーモアを交えて、
もし子どもが言い返せるなら、
「じゃあ、ママは
僕の心の将来のことについて考えているの?」
と言うかもしれないと書いています。
経済的不安が子育てを支配する
2018年の報道を引用しながら、
アメリカでは
子どもが親より豊かになれないかもしれない
という不安が広がっていることが紹介されています。
その結果、親は
子どもを成功させなければならない
というプレッシャーを抱えやすくなっています。
そして、子どもの
- 愛着
- 安心感
- 感情的ニーズ
よりも、
- 学業
- 成績
- 将来の競争力
が優先されやすくなっていると指摘します。
たとえば、子供と一緒に過ごす
「時間の質が大事」という考え方があるが
なぜ親たちが、そのような選択をしなければならないのか
つまり、
「時間の質」の議論の前に、
親が子どもと十分な時間を持てない
「そのような社会そのもの」を見なければならない
という視点です。
現代の親は子どもを愛していないのではない。
むしろ愛しているからこそ不安に駆られ、
その不安が子どもの本当のニーズを見えにくくしている。
まとめ
子どもを変える前に
親を支える必要がある
子どもに最も大きな影響を与えるのは、
親がどれだけ頑張っているかではなく、
親の神経系がどれだけ支えられ、余裕を持てているかである。
子供は、親の神経系の状態を受け取り、 それを通して世界を学ぶ。
参考図書:The Myth of Normal: Trauma, Illness, and Healing in a Toxic Culture (English Edition) Gabor Maté MD (著)
