参考図書:The Myth of Normal: Trauma, Illness, and Healing in a Toxic Culture (English Edition) Gabor Maté MD (著)
もし私たちの社会が、
人生最初期における子どもの感情的なつながりの重要性を
本当に理解していたなら、
子どもたちが苦しみながら成長したり、
親たちが健全な成長を育めない状況の中で
苦闘することを、
もはや当然のこととして受け入れはしないだろう。
— Stanley Greenspan
『The Growth of the Mind』より
「自己免疫疾患は、
“身体が自分を攻撃する病気”
と単純には言えない」
自己免疫疾患は80種類以上ある
たとえば:
- 多発性硬化症
- クローン病
- 潰瘍性大腸炎
- 関節リウマチ
- 強皮症
- 乾癬
- 1型糖尿病
- 自己免疫性湿疹
- 肺線維症
など“免疫が自分を攻撃する”という共通構造はあるけれど、現れ方は臓器ごとに違う。
多くの自己免疫疾患は、
“慢性的炎症”を伴う
ただし、「なぜ免疫系がそこまで過剰反応するのか?」は十分説明されていない
書籍内にて、Mee Okという女性の体験が紹介されています。
彼女は強皮症(systemic sclerosis / scleroderma)という重い自己免疫疾患を発症。
「身体が反乱を起こした」
自己免疫疾患は一般には、“免疫が自分自身を敵と誤認した”と説明される。
身体がなぜ自分を攻撃するようになるのか?
“なぜ免疫システムは、
そこまで極端な状態になったのか?”
つまり、
- 身体
- 感情
- ストレス
- 人生史
との関連を探ろうとしている。
長期間“自分を抑えて適応し続ける”ことが、
身体レベルの防御反応として現れる
「自己免疫とは“身体の誤作動”というより、
身体全体の防御システムの深い混乱ではないか?」
強皮症(systemic sclerosis / scleroderma)という自己免疫疾患をもつMee Okは、医師から
「回復はほぼ不可能」と考えられていたほど重症だった。
でも彼女は、
- 薬をやめ
- 歩き
- 旅行し
- ハイキングできるほどに回復した。
それ以前の彼女は、
- 症状が広がり続ける
- 医師からは「維持しかできない」と言われる
- ステロイド中心治療
- 治らない前提
という絶望感の中にいた。でも、
「なぜ身体がこうなったのか?」
という問いを持ち始める。
自己免疫疾患の多くは
“idiopathic(原因不明)”
現代医療は、
- 症状を抑える
- 炎症を止める
ことはできても、“なぜその人の身体がそうなったか”までは
十分扱えていない、という問題提起。
健康と病気を理解するには、
「環境」をもっと広く捉える必要がある
環境とは、
- 人間関係
- 感情環境
- ストレス
- トラウマ
- 社会圧
- 心理状態
も含めた
“biopsychosocial environment”
(生物・心理・社会的環境)
“身体が敵になった”のではなく、
身体が何かを必死に表現している
自己免疫疾患は、単なる“免疫の故障”ではなく、
人生全体・神経系全体の問題として見る必要がある
なぜ自己免疫疾患が
ここ数十年で急増しているのか?
- アメリカでは13人に1人が自己免疫疾患
- クローン病は1994〜2014で3倍
- カナダでは小児IBDが年7%以上増加
遺伝子は数十年で急変しない。
これは、遺伝だけでは説明できない。
つまり「身体を炎症化させる環境」
もし自己免疫疾患が急増しているなら、
原因は“環境変化”を含むはず
“something in our environment … is inflaming our bodies”
(私たちの環境の何かが身体を炎症化させている)
ここでいう環境は、
単なる化学物質だけではなく、
- 慢性ストレス
- 社会圧
- 差別的文化
- 過労
- 孤立
- 食生活
- 睡眠不足
- トラウマ
- 感情抑圧
なども含む広い意味で使われています。
自己免疫疾患は女性に偏っている
ページ中盤では、
かなり重要なデータが出ます。
自己免疫疾患患者の
約70〜80%は女性。
例:
- リウマチ → 女性3倍
- ループス → 女性9倍
- 強皮症 → 女性3倍
さらに、多発性硬化症(MS)は、
1930年代には男女差がほぼなかったのに、
現在では女性が急増している。
自己免疫疾患の急増や性差拡大は、
“環境側の変化” を考える必要がある
Mee Okの自己免疫疾患(強皮症)の背景として、
- 韓国で生まれ
- 幼少期に孤児院へ
- 6歳でアメリカへ養子縁組
という背景を持っていた。つまり、人生初期に
かなり大きな“分離・喪失”を経験している。
「長年“感じることを許されなかった感情”」
「過剰適応」
「抑圧された痛み」
Mee Okは、
- 記憶を完全に抑圧
- 感情を切断
- 痛みを埋め込む
特に重要なのは、
“感じないことで生き延びた”
彼女は、
- 明るく
- 前向きで
- 高機能で
- 人を支える人
として生きていた。でも著者は、
それは“本当の自分”ではなく、
生き延びるための適応人格だった
終盤でMee Okは、
“My body was really like a battleground”
(私の身体は戦場みたいだった)
と語ります。
「感情を抑えるほど、身体に出る」
1957年の専門医Dr. C. E. G. Robinson の言葉
関節リウマチ患者は、
周囲を喜ばせようと強く努力し、
怒りを間接的にしか表現できない
関節リウマチ患者に共通する感情パターン
- 自己犠牲的
- 過剰な世話焼き
- 過度な責任感
- 社会的に認められる人物であろうとする
- 強い反感、怒りを表現できない
- 完璧主義
など。
2013年の研究レビューでは、
患者に以下が多かったと紹介されています:
・ 発症前6か月〜2年の強いストレス
・ ストレス後に再発率増加
・ 幼少期トラウマ
・ 身体的・性的虐待
・ 感情と切断されやすい
・ 自己防衛が弱い
・ 社会的支援不足
著者はこれを単なる「性格診断」としてではなく、
「長期ストレス適応パターン」として見ています。
“感じない”
“怒らない”
“我慢する”
方向への適応が「慢性炎症」と関係している可能性。
42歳のJuliaの例
彼女は20代でRA発症
次々と関節炎症が広がる
最終的に26関節同時炎症という重症例。
感情面では、
・ 過剰な責任感
・ 怒りの抑圧
・ 周囲を支える役
・ 家族問題を抱え込む傾向があった。
さらに重要なのは、家族内性的虐待を誰にも言えなかったという背景があり、「安全のために感情を切断した」可能性が示唆されている。
そこでDr. Robinsonは、
性格パターンの方が、
「病気そのもの」より変化可能かもしれない
そのような性格パターンが変わると、
「身体状態も変化しうる」という視点。
今のJuliaは、
・ 症状なし
・ 薬なし
・ 元気に会話できる
状態になっている。彼女は
「リウマチとの会話が、今は“美しい会話”になった」と言う。
Mee Okを診た専門医たちは、
- 慢性ストレス
- トラウマ
- 感情
- 炎症
それらの身体の影響についての研究を「知っていた」にもかかわらず、実際の診療ではほぼ扱わなかった。理由として、
- 主流医学では周辺扱い
- キャリアリスク
- 同僚から浮く
- 科学的と見なされにくい
などが語られる。
免疫疾患は“単なる誤作動”ではなく、
人生全体との関係の中で起きているのでは?
つまり、身体・神経系・感情・社会環境は切り離せない
自己免疫疾患とは、
行き場を失った感情・防御・苦痛が、
身体レベルで噴き出した状態
「身体は環境を生きている」
免疫系は孤立した機械ではない
自己免疫疾患とは、
行き場を失った感情・防御・苦痛が、
身体レベルで噴き出した状態。
つまり、
- 社会
- 関係性
- 感情
- 安全感
- 長期ストレス
などが、神経系・炎症・免疫へ深く影響している。
あなたは“病気”なのではなく、
“プロセスの途中”なのだとしたら?
「病気は“突然現れる異物”ではなく、
人生全体・神経系・感情・環境との
関係性の中で起きる“プロセス”である」
病気=敵ではない病気は“裏切り”ではなく、
何かを伝えようとするプロセスかもしれない
Gabor Maté
参考図書:The Myth of Normal: Trauma, Illness, and Healing in a Toxic Culture (English Edition) Gabor Maté MD (著)



