マインドフルネスには大きく2種類の注意の向け方があると言います。
1:Focused Attention(集中注意)
ひとつの対象へ注意を向ける。
例えば、
- 呼吸
- 音
- 足裏
- 接点
などへの一点集中的な注意の向け方です。
2:Open Monitoring(オープンモニタリング)
注意を特定の対象へ固定せず、
今起きている体験全体を観察する。
通常の瞑想では、
まず呼吸などに集中し、
その後で注意を広げていきます。
著者は、
トラウマサバイバーの場合も、
この順番が役立つことがあると言います。
具体的な流れ
まず
- 足裏
- 音
- 呼吸
- 椅子との接点
などの安定したアンカー(1点)に集中する。
↓
神経系が落ち着いてきたら
↓
少しずつ
- 身体感覚
- 感情
- 思考
へ注意を広げる。
Dylanの実践
著者はディランと一緒に、
自宅で行う瞑想の手順を作りました。
- まず「聞くこと(hearing)」をアンカーにする
↓
- 身体感覚へ広げる
↓
- 思考へ広げる
↓
- トラウマ記憶や強い感覚が出たら、
再び「聞くアンカー」へ戻る
↓
- それでも難しければ目を開ける
↓
- 周囲へ定位する
↓
- さらに必要なら愛犬 Milo を呼ぶ
つまり、戻れる場所を何段階も用意していたのです。
著者は、
トラウマだけに注意を向け続けるのではなく、
レジリエンス(回復力)にも注意を向けること
を提案しています。
レジリエンスとは、
困難な経験の中でも、美しさやつながりや意味を見いだす力です。
彼はこれを
Taking in the Good
(良いものを取り入れる)
と呼びました。
例えば、
- 好きな人を思い出す
- 心地よい場所を思い出す
- 喜びを感じる瞬間を味わう
などです。
トラウマを抱えていると、
注意は脅威へ引っ張られやすい。
だから意図的に、
- 喜び
- 安心
- つながり
- 支え
にも注意を向ける。
それによって神経系は「危険だけが世界ではない」ことを学び直します。
安定した支えに集中し、そこから少しずつ世界を広げていく。
そしてトラウマだけでなくレジリエンス(回復力・資源)にも注意を向ける。
トラウマセンシティブな実践でのレジリエンス
レジリエンスは
「傷つかないこと」
ではありません。
レジリエンスとは、
どんなに困難な状況の中でも、
人としての尊厳や価値を失わず、
生きる力を保ち続けること
傷ついても、
その中で
- つながり
- 美しさ
- 喜び
- 意味
を見出せる力です。
著者は、
マインドフルネス実践の中でも
意図的にレジリエンスへ注意を向けることができると言います。
例えば、
- 安全だった場所の記憶
- 支えてくれた人
- 心地よい風景
- ペット
- 喜びを感じた瞬間
などです。
そして、
それらをただ思い出すだけではなく、
「 その時の身体感覚も感じることが大切だ 」と説明しています。
ディランの例
ディランにとって、
最も強力なレジリエンス資源の一つは
愛犬の
Milo(マイロ)
でした。
著者は、
ディランが自宅で不安定になった時、
部屋の向こうにいるマイロを見るよう勧めました。
すると、
マイロの穏やかな表情を見るだけで、
ディランの身体は少し柔らかくなりました。
イメージだけでも効果がある
さらに興味深いのは、
マイロがその場にいなくても、
マイロと公園を走っている場面を想像できたことです
すると、
- 呼吸が深くなる
- 胸が開く
- 足に活力が戻る
などの変化が起きました。
著者は、
その時ディランが
身体と心を結び直していた
と説明しています。
レジリエンスは現実逃避ではない
レジリエンスに注意を向けることは、
- 問題から逃げることでも
- トラウマを否認することでもありません。
また、社会的不正や暴力を見ないふりすることでもありません。
そうではなく、
困難を抱えながらも、
今ここで生きる力を支えることです。
トラウマセンシティブな実践で紹介している工夫は、
トラウマを避けるためのものではない。
むしろ、
人がトラウマ症状のただ中にいても、
安定を見つけられるよう支援するためのものだ。
回復とは、傷だけを見ることではなく、
すでに存在している回復力や支えにも気づくことである。
「あなたを支えているものは何ですか?」
参考図書:Trauma-Sensitive Mindfulness: Practices for Safe and Transformative Healing (English Edition) David A. Treleaven (著)
日本語訳もでています>>トラウマセンシティブ・マインドフルネスー安全で変容的な癒しのために デイビッド・A・トレリーヴェン (著)
