ASD/ADHDの多くの困りごとは
「できない脳」ではなく「安全に保ちにくい神経系」から起きている
この行動は能力の問題か?
それとも、神経が今どこにいるから起きているのか?
ASD(自閉スペクトラム症)
- 社会的コミュニケーションの独特さ
- 感覚の過敏・鈍感
- こだわりや予測可能性の重視
ADHD(注意欠如・多動症)
- 注意の切り替えや持続の難しさ
- 衝動性・多動
- 時間感覚・実行機能のばらつき
ASD/ADHDの多くに見られるのは
安全状態(腹側迷走神経)が維持しにくい
外界刺激を強く、早く、大量に受け取りやすい
神経系が過覚醒 ↔ 凍りつき を行き来しやすい
| 見える行動 | 実際に起きていること |
|---|---|
| 無視する | 背側に落ちて「凍りつき」=入力不能 |
| ふざける | 過覚醒(交感神経優位)の自己調整 |
| 動き回る | 神経を落とそうとしている |
| 引きこもる | 安全確保の戦略(背側迷走神経) |
| 見える行動 | 神経系で起きていること |
|---|---|
| 目を合わせない | 視線が脅威刺激になりやすい |
| 落ち着きがない | 過覚醒を下げようと動いている |
| 反応が止まる | 凍りつき(背側迷走) |
| こだわる | 予測不能から身を守る戦略 |
なぜ「教える」「叱る」が効かないのか?
- 神経系が安全でない状態では学習が起きない
- 前頭葉(理解・抑制)がオフライン
- 「分かってるのにできない」
「発達障害」という言葉の再定義
❌ 発達が遅れている
❌ 未熟・欠損している
⭕ 神経系の反応パターンが「多数派と違う」
⭕ 環境との相互作用で困りごとが生じやすい
そうすると支援の方向がどう変わるか?
❌ 旧来モデル
- 行動を直す
- 我慢させる
- 慣れさせる
✅ 神経状態モデル:能力は“安全の上に自然に出る”
- 安全を作る
- 切り替えを助ける
- 戻れる環境を整える
1️⃣ 神経状態の基準値
- 常に警戒していた神経系が
→ 安全に戻りやすくなる - 過覚醒・凍りつきの滞在時間が短くなる
2️⃣ 切り替えの速さ
- 以前:崩れると何時間・何日も戻れない
- 回復後:崩れても自力で戻れる
- 以前より「生きやすくなる」
3️⃣ 可動域(ウィンドウ・オブ・トレランス)
- 対応できる刺激の幅が広がる
- 社会的関わりの耐性が増す
- 特性は同じでも、詰まらなくなる
配線を変えるのではなく、使える道を増やす。
神経の「切り替え回路」が鍛えられることによって、
- 腹側迷走神経(安全・つながり)のアクセス性が上がる
- 交感・背側迷走に落ちても固定化しなくなる
「ASD/ADHDの神経状態の問題」とは何を指すのか
本人の能力・性格の問題として扱われがち
- 集中力がない
- 社会性が低い
- 感情調整が苦手
神経状態モデル(ポリヴェーガル視点)
神経系が
- 過覚醒になりやすい
- 凍りつきに落ちやすい
- 安全状態(腹側迷走)を維持しにくい
状態の問題であって、能力の欠損ではない
ASD/ADHDで起きやすい神経的特徴
安全神経(腹側迷走)の“基準値”が低い
:普段から「ちょっと緊張」
- 何も起きていなくても警戒が入りやすい
- 他者・環境が安全信号として入りにくい
交感神経が立ち上がりやすい
- 音・光・予定変更・対人刺激で一気に過覚醒
- ADHDでは特に衝動性・多動=過覚醒の表現になりやすい
落ち着き・人格、性格の問題ではない
逃げ場がないと「凍りつき」に落ちる
- ASD/ADHDの凍りつきは突然・深く・長い
- 行動停止、無反応、シャットダウン
- 怠け・反抗と誤解されやすい
状態の切り替えに時間とエネルギーが必要
- 立て直すのに時間とエネルギーが必要
- 周囲は「もう終わったでしょ」と感じるが
本人の神経系はまだ戻っていない
言葉より先に、神経が受け取る情報が安全かどうか
1️⃣ 予測可能性:安心=コントロール感
- 次に何が起きるか分かる
- 終わりが見える
- 変更は事前に伝えられる
2️⃣ 横並びの関係(人+課題)
- 正面で向き合わない
- 同じ方向を見る
- 会話がなくても成立する課題(ゲーム、料理、趣味など)がある
- 視線・評価の圧が下がる
3️⃣ 声のトーン・速さ
- 低め・ゆっくり
- 感情を乗せすぎない
- 指示は短く
- 腹側迷走は“音”で反応する
4️⃣ 選択肢の少なさ
- AかB
- 今やる/あとでやる
- 自由=選択肢の多さではない
5️⃣ 一貫した存在
- 同じ人
- 同じ態度
- 気分で変わらない
- 関係の安定=最大の安全信号
❌ 安全になりにくい要素
- 正しさの説明
- 共感の言語化の押しつけ
- 視線の強要
- 「大丈夫?」の連呼
- 意図が善意でも神経には脅威
「変わった」と感じる瞬間
周囲や本人が
- 前より落ち着いた
- 人と関われるようになった
- こだわりが減った
と感じることがあります。でも実際は
特性が消えたのではなく
神経が安全でいられる時間が増えただけ
逆に、ここは変わらない前提で設計する
- 感覚の鋭さ
- 予測可能性の必要性
- 疲れやすさ
これを「克服させよう」とすると二次障害・燃え尽きが起きる。
