1. 自己調整(Self-Regulation)は回復の重要な柱
著者は、Samとの初期セッションで
まず行ったこととして、
- Window of Tolerance(耐性の窓)の理解
- 安全な注意の向け先を見つける
- 限界が近づくサインを学ぶ
ことを挙げています。
つまり、
「なぜこうなったのか」を探る前に、
まず神経系を安定させる力を育てることが優先だったのです
しかし、自己調整は一人だけで身につくものではない
トラウマによって大きく混乱した状態では、
自分一人の力だけで落ち着くのは非常に難しい。
そこで必要になるのが、
他者による調整
(co-regulation:共同調整)
です。
人はもともと共同調整によって育つ
著者は「発達心理学」の研究を引用しながら、
人は生まれつき、十分な自己調整能力を持っているわけではない
と説明しています。
赤ちゃんは、
- 親の声
- 表情
- 抱っこ
- 呼吸のリズム
によって神経系を整えてもらいます。
つまり、
自己調整の土台は、
まず他者との共同調整から生まれる
という考え方です。
大人になっても共同調整は続いている
興味深いのは、
これは子どもだけの話ではないという点です。
著者は、
- 信頼できる人の声を聞く
- 顔を見る
- そばにいてもらう
それだけでも「神経系は落ち着く」と説明しています。
逆に言えば、
不安なときに
「もっと頑張って、一人で整えなきゃ」
とするより、
安全な人とのつながりが
助けになることがあります。
セラピストの役割
トラウマ支援者の役割は単に話を聞くことではなく、
神経系の共同調整を提供することでもある
と述べています。
例えば、
- 落ち着いた声
- 安定した存在感
- 呼吸を促すこと
- ゆっくり話すこと
などによって、
相手の神経系が
安全な状態へ戻るのを助けます。
そしてその体験を繰り返すことで、
やがて、自分一人でも調整できる力が育っていきます
この自己調整(Self-Regulation)は回復の重要な柱
自己調整だけでなく「対人調整」がある
著者はここで
Inter-relational Psychobiological Regulation
(関係性による心理生物学的調整)
という考え方を紹介します。
人は一人で神経系を整えているわけではなく、
お互いに影響し合いながら調整している
ということです。
例えば、
- アイコンタクト
- 表情
- 声のトーン
- 身体的距離
などが神経系に大きく作用します。
人とのつながりは神経系を安定させる
安全な人との接触があると、
社会交流システム(Social Engagement System)が働きやすくなります。
その結果、
- 安心感
- 落ち着き
- 調整力
が高まり、
お互いの神経系が自然に同期していきます
4. グループにも調整作用がある
共同調整は個人対個人だけでなく、
- ダンス
- 歌
- ヨガ
- 太鼓
- 武道
などのグループ活動でも起こると説明しています。
こうした活動では、
身体やリズムがそろうことで
Synchrony(同期)
が生まれます。
その同期が神経系の安定化を助けます。
トラウマはつながりを壊すが「コミュニティは回復を支える」
トラウマによって人とのつながりが失われても、
コミュニティは再び回復を支える重要な要素になりうる
コミュニティは、
- 安全感を与える
- 感情調整を助ける
- 経験を意味づける
- 「自分は一人ではない」と思い出させる
役割を持っています。
癒しは
「一人で静かになること」
だけでなく
「安全な人たちと共に静かになること」によっても深まる。
ことが多かったと報告しています。
回復はコミュニティの中で起こる
トラウマ回復も同じだと述べています。
回復は、
- 家族
- 友人
- 仲間
- 支援グループ
- 地域社会
などとのつながりの中で育まれます。
そして引用されている
Bessel van der Kolk の言葉
トラウマによる傷は
人間関係の中で生まれることが多いが、
癒しもまた人間関係の中で起こる
支援者は「コミュニティの力」を忘れてはいけない
著者は心理療法家として、つい
回復はセラピストとの個人セッションで起こる
と考えがちだったと振り返ります。
しかし実際には、
回復は「セッションの外」でも起こっています。
例えば、
- 瞑想仲間
- サポートグループ
- 友人との会話
- 地域コミュニティ
なども重要な回復資源になります。
Samを支えたのは「仲間とのつながり」だった
著者はSamに、
Cheetah House
瞑想によって困難な体験をした人たちを支援するコミュニティ
を紹介しました。
Samはそこで、
- 記事を読む
- 動画を見る
- 同じ経験をした人と話す
ようになります。その結果、
「自分だけがおかしいのではない」
と感じられるようになりました。
このページの核心
このページ全体を一言でまとめると、
トラウマは孤立を生むが、回復はつながりの中で起こる
というメッセージです。
- 同じテーマを探求する仲間がいる
- 安心して話せる場がある
- 「私だけじゃなかった」と感じられる
ということ自体が、神経系にとって大きな回復資源になります。
「支えられながら、気づく」
それは、個人だけでなくコミュニティにも広がっている
参考図書:Trauma-Sensitive Mindfulness: Practices for Safe and Transformative Healing (English Edition) David A. Treleaven (著)
日本語訳もでています>>トラウマセンシティブ・マインドフルネスー安全で変容的な癒しのために デイビッド・A・トレリーヴェン (著)
