HSPを「SPS(感覚処理感受性)」から見てみる

癒し

「私はHSPだから」で終わらせず……

「私は何に、どのように反応する?」

そこから自分に合った環境・ここちよさを選んでいく

「私はHSPだから、人混みが苦手」
「HSPだから、人の感情に影響されやすい」
「HSPだから、疲れやすい」

HSP(Highly Sensitive Personの略:非常に感受性の高い人)という言葉は、ずいぶん広く知られるようになりました。

けれど、HSPについて調べていると、
もうひとつ、あまり聞き慣れない言葉が出てきます。

SPS(Sensory Processing Sensitivity/感覚処理感受性)です。

シンプルに整理すると、

SPS = 特性・研究概念
HSP = SPSが高い人を表すために使われる呼称

と考えると、わかりやすくなります。

SPSという「環境への感受性」という特性

SPSは、

周囲から入ってくる刺激や情報に対して敏感で、
それらを深く処理しやすい傾向を指します。

心理学の研究で扱われている個人差のひとつです。

SPSの特徴を知る「DOES」

では、「感受性が高い」とは具体的にどういうことなのでしょう。

SPSの提唱者である心理学者エレイン・アーロンは、
高い感受性にみられる特徴を理解するために、
「DOES」という4つの観点で整理しています。

D|Depth of Processing
深く処理する

入ってきた情報を、じっくりと処理する傾向です。

ひとつの出来事についていろいろな角度から考えたり、過去の経験と結びつけたり、そこにある意味を考えたりします。そのため、ほかの人が通り過ぎてしまうような小さな違いや変化に気づくこともあります。

「考えすぎ」と見えることの背景に、こうした情報処理の深さがある場合もあります。

O|Overstimulation
刺激が多いと、圧倒されやすい

たくさんの情報を受け取り、それを深く処理していると、当然、処理する情報量も増えていきます。

大きな音
強い光
人混み
たくさんの人との会話
忙しいスケジュール。

そんな刺激の多い環境では、疲れたり、圧倒されたりしやすくなります。

これは単に「刺激に弱い」というより、

たくさん受け取り、
たくさん処理しているために、
処理量が大きくなりやすい

と考えてみると、少し見え方が変わります。

E|Emotional Reactivity & Empathy
感情が動きやすく、共感しやすい

人の表情や声の調子、場の空気などに反応しやすく、他者の感情にも気づきやすい傾向があります。

そして感受性は、つらいものだけに向けられるわけではありません。

音楽を聴いて胸がいっぱいになったり、
美しい風景に深く感動したり、
誰かの優しさにじんわりと心を動かされたり。

「よいものを深く受け取る」ことも、感受性のひとつの側面です。

S|Sensing the Subtle
小さな違いや微細な刺激に気づく

小さな音。
かすかな匂い。
光の変化。
服が肌に触れる感覚。
人の表情のちょっとした変化。

周囲の人なら気に留めないような微細な情報にも気づきやすい傾向があります。

日常ではたとえばこんなことが起こりえます。

  • 音:時計の音、冷蔵庫の低い作動音、隣の人の咀嚼音などが気になって、集中しづらい。
  • 匂い:香水、柔軟剤、飲食店の匂いなどに早く気づき、その場に長くいると疲れることがある。
  • 光:蛍光灯、強い照明、画面の明るさなどが負担になり、落ち着かない。
  • 触覚:服のタグ、素材、締めつけ、アクセサリーなどがつけられない、髪が肌に触れることなどがずっと気になってしまう。
  • 人の変化:声色、表情、返事の間などのわずかな違いから「今日はいつもと違う」と気づく。
  • 環境全体:人混みや会議、ショッピングモールのように「音+光+人+会話」などが重なると、情報量が多くなってどっと疲れる。

ただ、これには反対側の面もあります。

小鳥の声に気づく。
風の匂いで季節の変化を感じる。
料理の微妙な味の違いがわかる。
相手の小さな表情の変化から気持ちを察する。
光や色、音楽、自然の美しさを細やかに味わう。

つまり、

「微細な刺激に気づく」
→ 不快な刺激にも気づきやすい
→ 心地よい刺激にも気づきやすい

DOESを見ると、
「敏感」の意味が少し変わる

こうして4つを並べてみると、SPSは単に
「刺激に弱い」という話ではないことがわかります。

気づく。
深く処理する。
心が動く。
そして、情報が多くなりすぎると圧倒される。

これらがつながっている、と考えることができます。

「私は人より多くのものを受け取って、深く処理しているのかもしれない」

と自分を見ることもできます。

ただし、DOESはHSPを診断するための医学的な診断基準ではありません。SPSそのものも病気や障害ではなく、人によって程度の異なる感受性の特性として研究されています。

そして現在の研究では、感受性についてさらに細かな側面から捉える尺度も研究されています。

DOESは「HSPか、HSPではないか」と人を分類するためというより、

「自分は、どんなものを受け取りやすく、どんなふうに処理しているのだろう?」

と、自分の感受性を知るためのひとつの地図として使うとよいのではないでしょうか。

SPSは病気や障害の名前ではない

ここで大切なのは、SPSは病気や障害の名前ではないということです。

「ある/ない」と二つに分けるものというより、

人によって程度の異なる感受性の特性

として捉えられています。

では、HSPとは何なのでしょう?

上記にて

SPS = 特性・研究概念
HSP = SPSが高い人を表すために使われる呼称

と説明しましたが、

HSPとは、Highly Sensitive Personの略で、
直訳すると「非常に感受性の高い人」。

SPSという感受性の特性が高い人を説明するために使われてきた言葉です。

つまり、

「HSPという種類の人間がいる」というより、
「SPSという特性があり、その程度には個人差がある」

と考えるほうが、研究上の概念には近くなります。

たとえば

身長を考えてみるとわかりやすいかもしれません。

人間が「高身長タイプ」と「低身長タイプ」の二種類に完全に分かれているわけではありません。人によって高さが違い、そのなかで「比較的背が高い人」がいます。SPSも、それに少し似ています。感受性には個人差があり、そのなかで感受性が高い人を説明するときに「HSP」という言葉が使われています。

HSPという言葉から、

「刺激に弱い」
「傷つきやすい」
「疲れやすい」

というイメージを持っている人もいるかもしれません。

けれどSPSという視点から見ると、もう少し違った姿が見えてきます。

感受性が高いということは、

ネガティブな刺激だけを強く受け取る

という意味ではありません。

安心できる環境。
心地よい人間関係。
自然。音楽。美しいもの。

自分に合った空間。

そうしたポジティブな環境からも影響を受けやすい可能性があります。

だから、

「刺激に弱い人」というより、
「環境から受け取る情報の感度が高い人」

と考えてみると、少し見え方が変わります。

「自分を変える」より「環境との関係を見る」

感受性の高さによって疲れていると、

「もっと気にしないようにならなければ」

「もっと強くならなければ」

「普通の人みたいにできるようにならなければ」

と思ってしまうことがあります。

でも、SPSをその人と環境との相互作用として眺めてみると、問いが変わります。

「どうすれば敏感ではなくなる?」

ではなく、

「この感受性を持った神経系にとって、どんな環境が心地よい?」

と問い直すことができます。

・ 刺激の量を減らす。

・ 安心できる人との時間を増やす。

・ 一人になる時間をつくる。

・ 心地よい光や音、温度を選ぶ。

・ 身体がほっとする場所に移動する。

それは「弱い自分への対処」ではなく、
自分の特性に合わせて、環境との関係を調整すること

なのかもしれません。

HSPという「自分」から、SPSという「特性」へ

「私はHSPです」

という言葉によって、

それまで説明できなかった自分の感覚が理解できて、
ほっとした人もいると思います。

名前がつくことで、

「だから私はこんなに疲れていたのか」

と自分を理解できることもあります。

その一方で、

「私はHSPだから、これはできない」
「HSPだから、人付き合いが苦手」

と、いつの間にかHSPという言葉が
「自分そのもの」になってしまうこともあります。

そんなとき、

HSPという“人の種類”から、
SPSという“自分が持っている特性”へ

少し見方を変えてみる。

「私はHSPだから」ではなく、

「私は、こういう刺激には感受性が高いみたい」と観察してみることで、
「では、どんな環境なら心地よい?」という次の問いが生まれます。

自分をひとつのラベルのなかに入れて制限してしまうのではなく。

自分の神経系が、
何に反応し、
何によって落ち着き、
何を心地よいと感じるのかを知っていく。

SHAlicaでは、そんなふうに「自分」というものを眺めていきたいと思っています。

補足

HSPは医学的な診断名ではありません。また、感覚への敏感さや疲れやすさは、SPSだけでなく、自閉スペクトラム症(ASD)、ADHD、不安、ストレスやトラウマに関連する反応など、さまざまな背景で生じることがあります。

「敏感だからHSP」と決めるのではなく、
生活上の困難が大きい場合には、それぞれの背景を分けて考えることも大切です