うまくいかないとき、能力ではなく状態をみる「神経系の状態によるつまずきやすさ」

癒し

うまくいかないとき、能力ではなく「状態」をみる
「うまくできない=能力不足」とは限らない。

高覚醒=「急がなきゃ」の身体
低覚醒=「動けない」の身体
認知優位=「感じる前に考える」頭

神経系の状態によって、つまずき方は変わる

「考えがまとまらない」

「何もする気になれない」

「些細なことなのに、ものすごく不安になる」

「決められない」

「自分がどうしたいのかわからない」

そんなとき、私たちはつい、

「私は意志が弱い」
「考える力が足りない」
「自分のことがわかっていない」
「もっと頑張らないと」

と、自分の能力や性格の問題として捉えがちです。

でも実際には、同じ人でも、

そのときの身体や神経系の状態によって、
使いやすい機能はかなり変わります。

昨日は簡単にできたことが、今日はできない。

午前中にはまとまらなかった考えが、
少し歩いたあとには自然にまとまる。

安心している場所では話せるのに、
緊張する場では何も浮かばなくなる。

これは必ずしも、

「能力がなくなった」

ということではありません。

いま、その能力を使いやすい神経状態にない。

という可能性もあります。

大まかに見ると、つまずきやすい状態にはこんな違いがあります。

高覚醒・低覚醒は主に「身体/自律神経の覚醒レベル」
認知優位は「注意や処理が、身体感覚より思考・言語・分析に偏っている状態」

状態神経系として見ると主観的には
高覚醒交感神経系やストレス反応が強まり、身体が「対応しなきゃ」モード焦る、落ち着かない、考えが止まらない、緊張
低覚醒全体の覚醒水準が低く、行動を起こすエネルギーや注意の立ち上がりが弱い眠い、重い、動けない、ぼんやり、何もしたくない
認知優位前頭前野などを使った言語化・分析・評価・予測に注意資源が偏り、身体感覚や情動へのアクセスが相対的に弱い「考えてはいるけど、どうしたいかわからない」「正解を探してしまう」

1|高覚醒すぎる

不安や緊張が強く、身体も頭も働きすぎている状態です。

このとき起こりやすいのは、

  • 考えが止まらない
  • 最悪のケースを何度も考える
  • 身体がこわばる
  • 小さなことにも敏感になる
  • 結論を急ぎたくなる
  • 「でも、どうしよう」が何度も出てくる

ということ。

頭はたくさん働いているので、
一見「よく考えている」ように見えます。

でも実際には、視野が狭くなり、

危険を探すことに認知資源が使われている

ことがあります。

この状態でさらに、

「ちゃんと考えよう」
「早く答えを出そう」

とすると、かえってループが強くなることもあります。

そんなとき必要なのは……

問題解決より先に、
支えを感じる、呼吸する、周囲を見る、足裏を感じる
など、身体を「ここ」に戻していくことかもしれません。

2|低覚醒すぎる

反対に、エネルギーが落ちすぎている状態もあります。

このときは、

  • 何も浮かばない
  • やる気が出ない
  • 決めるのが面倒
  • 身体を動かしたくない
  • 感情もよくわからない
  • 頭に霧がかかったように感じる
  • 「まあ、どうでもいい」となる

といったことが起こりやすくなります。

ここで、

「もっと集中しよう」
「もっと自分の内側を感じよう」
「気合いを入れよう」

としても、うまくいかないことがあります。

そもそも今は、

考えたり感じたり行動したりするための
覚醒レベルが足りていないからです。

そんなときは、

目を開けて周囲を見る。
少し立つ。
歩く。
身体を揺らす。
外気に触れる。
温かいものを飲む。

など、

少しだけエネルギーを上げる方向

のほうが合っていることがあります。

3|認知が前面に出すぎる(考えすぎ)

もう一つ、覚醒そのものとは少し違いますが、よくあるのが

「頭だけが前面に出ている状態」

です。

これは必ずしも不安が強いわけではありません。

むしろ落ち着いているように見えても、

  • 分析ばかりしてしまう
  • 正解を探してしまう
  • 理由を説明できないと不安になる
  • 最初の感覚を疑う
  • 何でも言語化しようとする
  • 考えているうちに、何を感じていたのかわからなくなる

ということがあります。

たとえば、

「今日は休みたい」

と一瞬感じても、

「でもこれは怠惰では?」
「本当に疲れているのか?」
「休む合理的根拠は?」

と、考え始める。

すると、最初にあった小さな身体感覚や方向感覚が、
認知によって上書きされていきます。

この状態では、

もっと考えることではなく、
考える前に浮かんだものをいったん置いてみる

ことが助けになります。

「なんとなく嫌」
「こっちがいい」
「疲れた」
「今日は静かにしたい」

そのくらいでもいい。

すぐに説明しなくてもいい。

同じ「できない」でも、理由は違う

表面上はすべて、おなじ「できない」に見えますが、中身は違います。

状態起こりやすいこと必要になりやすい方向
高覚醒考えすぎる、不安、焦る落ち着く・支え・Outsideに意識をむける
低覚醒浮かばない、動けない、ぼんやり少し動く・刺激・覚醒を上げる
認知優位分析、正解探し、感覚を疑う深掘りを止める・最初の感覚を採用する・シンプルさ

だから、

「集中できないから集中力を鍛える」

「決められないからもっと考える」

「動けないから自分を叱る」

とは限らないんですよね。

まず、

いま私は、どんな状態なんだろう?

を見る。それだけで対応が変わります。

「できない私」ではなく「いま、この状態」

ここで大切なのは、

状態と自分を同一化しすぎないこと

だと思います。

「私は何もできない人」ではなく、
「いまは低覚醒で、動き始めにくい」

「私は心配性」ではなく、
「いまは覚醒が高く、危険を探しやすくなっている」

「私は優柔不断」ではなく、
「いまは認知が前面に出て、正解探しになっている」

すると、

人格の問題から、状態の調整の問題へ
少し視点を移すことができます。

これは、自分を甘やかすということではありません。

むしろ、

いま使える機能と、
使いにくい機能を見極める

ということです。

整った状態では、「頑張らなくてもできる」が増える

神経系の状態がほどよいところに戻ってくると、

無理に頑張らなくても、

「これをやろう」と浮かんだり、

「私はこっちがいい」と感じられたり、

自然に人の話を聞けたり、
考えがまとまったりします。

つまり、

能力そのものを増やす前に、
能力が出てきやすい状態をつくる

という考え方もできるわけです。

つまずいたら、まず「状態」を確認する

何かがうまくいかないとき。

すぐに、

「どう解決する?」

へ行く前に、少しだけ手前を見てみます。

いま、緊張しすぎていない?

エネルギーが落ちすぎていない?

頭だけでなんとかしようとしていない?

そこがわかると、必要なことが、

「もっと考えること」なのか、
「休むこと」なのか、
「少し動くこと」なのか、
「周囲を見ること」なのか、
「考えるのをいったん止めること」なのか、

選びやすくなります。